調査スピードをアップしたい!短時間でスクリーニングするコツを教えます

特許調査の仕事をして6年が経ち、新人の指導をする機会が増えてきました。
そんな中、新人の調査員から、

どうやったら調査スピードを上げられるのでしょうか?

と質問をもらうことが増えてきました。

新人だとまずは「1日あたりの工数を達成すること」が目標になります。
当たり前ではありますが、最初の頃はなかなか上手くいかないこともありますよね。

私自身、新人の頃は上手く調査をさばけなくて、そして、近づく納期に焦ってミスをする事があったり・・・。
納期直前になって「実は●●と書いてあるものも抽出対象だった!」と気がつき、慌ててもう一度見直しをするハメになったり・・・。
誰もが通る道と言えますが、考えただけでゾッとしますよね。
そして、調査スピードを上げて余裕を持って調査できるようになりたいですよね。

私自身、まぁまぁ苦い経験を何度も積み重ね、今では調査スピードは人より抜きん出るようになったと思います。(もちろん、調査の正確さは維持しながら)
過去を振り返ってみて、一番大量に仕事をしていたときは、急な病気で1ヶ月ほど休まなければならなくなった調査員の仕事を全て引き受け、さらに、新人調査員の調査のフルチェックをこなしていた時だと思います。もちろん私自身が担当していた調査も平行にこなしながらです。
当時は、2.5人分以上の仕事を毎日こなしていたのではないでしょうか。(それくらいしないと、調査以外の打ち合わせや見積りといった作業にも対応出来なかったのです)

というわけで、今回は私の例を参考に、調査スピードをどうやって上げているかを紹介していきます。




調査スピードは調査観点を明確にすること。これだけで無駄な作業がなくなります

早速、「何を当たり前なことを・・・」と言われるかも知れませんが、調査スピードを早くするかどうかはこの調査観点を明確に理解しているかが本当に重要なんです。

これを抜きに調査スピードを上げる方法はありません。

調査依頼者から提示される調査観点を見て、「こんな感じでしょ?」とか、「こういう雰囲気の公報を抽出すればいいんでしょ?」という、ざっくり・なんとなく分かっている程度で調査をしても、ミスや見落としが発生して、全件見直しするハメになりますよ。
見直しが発生すると、結局時間が掛るという結果になってしまうのです。

調査観点をしっかり理解することは調査スピード以外にもメリットがある

調査観点を理解する事で得られるメリットは、調査スピードだけではありません。

調査観点で不明点や疑問点をスッキリ解決させることで、調査の品質を上げることに繋がります
さらに言えば、しっかり調査観点を理解していることで、納品の際に自信を持って結果を渡すことが出来ます

仮に、調査観点をしっかり理解出来ていない状態で進めたとしましょう。
そういう時は大抵、調査をしながら「あれ?これは微妙だなぁ。抽出かどうかの判断に迷うな」「なんとなく抽出っぽいけと、ノイズ(非抽出)かも知れない」なんていうがたくさん出てくることになると思います。
その曖昧な状態で調査を続けていくと、いざ納品するとなると「もしかしたら見落としをしているかもしれない」「あのとき迷った公報はもしかしたら判断を間違えたかも?」という不安を持ち続けることになります。
この不安って結構ストレスになるんですよ・・・。

ちなみに、脅しではなく特許調査は信頼を失うと、依頼も無くなります。
納品したもの(担当した調査員)に対して、調査依頼者が不安や信用できなくなった時点で、その調査結果に価値はなくなるのです。

だからこそ調査観点の理解するという作業は、とっても大事なんです!!

どうやって調査観点の理解を深めているの?

調査観点をしっかり理解する事が、調査スピードを上げるだけでなく、調査品質や自信にも繋がることは分かって頂けたと思います。
では、どうやって調査観点の理解を深めているのかを、紹介していきます。

調査観点に近い可能性がある文献から読む

調査を実際にやっている人はなんとなく実感していると思いますが、調査で読む文献は必ずしも、お客様からの調査依頼書のように明確に書いているとは限りません。
むしろ、請求項ではボンヤリとしか書いていないことの方が多いです。

「キーワードからして近そうだと思うんだけど、なんだかはっきりしないな・・・」
・・・と悶々とすることが起きがちです。

しんどい作業ではありますが、こういう判断しにくいものを調査スタート時に読むこむ方が後々良い結果に繋がるのです。
最初に判断に迷う公報を見ることで、「なぜ迷うのか?」を考えるようになり、結果として調査観点を本当の意味で理解できるようになります
迷った部分や分かりにくい部分をまずは自分自身の努力で調べてみて、それでも結論が出せなかったものは早めに調査依頼者に質問していくのです
(調査依頼する側からしても、調査内容を理解出来ていない状態で調査されるのはイヤですからね。)

私自身、調査初日に調査観点に近い公報をキーワードでピックアップして、先に読んでしまいます。
しんどくてもこの最初の踏ん張りを乗り越えれば、調査観点をしっかり理解出来るようになりますし、その後の調査の判断が面白いくらいサクサク出来るようになるのです。

最初の権利範囲が近しい100~200件の調査時点で報告書のたたき台を作ってしまう

私は最初の100~200件で、調査報告書を作り始めてしまうことは結構あります。
「依頼書に書いてある通り」で済ますのではなく、一度自分自身の手を動かして文章化してしまうのです。
一言一句意識することができるので、「実はよく分かっていなかった」ということに気がつくことができます

さらに、実際に調査をしていくと、「この公報は抽出(調査観点)に近いけど、よく読んでみると●●の点でノイズだ(調査観点には書いてない内容だった)」と思うことが出てくることがあります。
こういったちょっとした気づきも、忘れる前に報告書に箇条書きでも良いので調査をしながら書いていきます。

最終的には、調査依頼者に対して「私はこの公報を●●という理由でノイズ(もしくは抽出)にしましたけど、修正する必要があればコメントください」という意思表示にもなります。

もしも、調査をスタートしてから「この調査は結構迷う事が多いな」と思った時は、ざっくりでも良いので文章に書き起こすという作業を意識してみましょう。
高い確率で「調査観点をまだ十分に理解出来ていない」ということが考えられます。
箇条書きでも良いので書き出してみると、自分の頭の中を整理する事ができます。
私は、新人の頃はこの作業を積極的に行っていたのですが、「自分は調査観点を理解しているつもりでしかなかったんだ・・・(;゚ロ゚)」と思う事が結構あったと記憶しています。

ノイズ落とし?読み込み?何に集中するかでスピードアップ!効率よく作業をしよう

後半では調査観点の理解以外でのスピードアップ方法を紹介します。
これは人によって好みがあるかもしれないので、私の例を参考にしつつご自身に合った方法を模索してくだされば、とも思っています。

私の調査での流れを簡単に紹介しますと、

  1. 関連度の高そうな公報から100~200件くらい読み、調査観点をしっかり理解する。(依頼者にも判断にズレがないかを確認してもらう
  2. 調査観点をしっかり理解したら、残りの未調査分を「抽出+抽出かもしれない」「ノイズ」のざっくり2グループに分類
  3. 「抽出+抽出かもしれない」を読み込んで、正確な判断をする

こんな感じです。

何故こういう流れで作業をしているかというと、「抽出」もしくは「抽出かもしれない」と思う公報は出願人が同じことが多いからです。
出願人が違ったとしても、競合だったりします。

なので、「抽出の可能性があるな」と思うものを一気にまとめて読んでしまう方が「さっきの公報にも似たような事書いてあったな」とか、細かい部分を比較したり検討したりしながら判断できるので、調査結果のブレが少なくなると考えています

「ノイズ落とし」と「読み込み」を分ける事で作業を単純化する

ここからは、私の感覚的な部分も含まれる話になるのですが、、、
私は「ノイズ落とし作業」と、「読み込み作業」を分業することで、負担を軽減させたり、集中力の維持することが出来ています
意外と「ノイズ落とし作業」と「読み込み作業」って、脳の使い方が違うと思います。
(過去にとある知財部員も似たことを言っていたのを聞いたことがあるので、案外本当なんだろうと私は思っています)

もしも、ノイズ落としと読み込みを分けなかった場合、
一つ一つの公報を見ては、「あ、これはノイズだ」とか「抽出かもしれないから、その根拠を探さなきゃ」という事を、その都度脳内での切り替えを続けていくことになります。
この切り替えは、人によってはこの切り替えが疲れるし、集中力が途切れる可能性もあるのです。
(私は、集中力があっという間に切れてしまうタイプでした。)

どれくらいのペースで作業をしたのかを、直近の実例で紹介

ちなみに、最近私が担当した調査で例を紹介します。
先日、約2000件の侵害予防調査を私1人で担当しました。

(調査の内容だったり、項目付与や確認する範囲によって1日当たりに処理できる件数は変動するのであくまでも参考としてください。)

1.初日に関連度の高そうな公報を100件ほど読み、調査依頼者に判断のズレがないかの確認をしてもらう。
2.残りの未調査分1900件を約3日間でノイズ落とし(約1500件はノイズと判断した)。
約500件くらいを読み込みが必要なもの(抽出+抽出かも?)として分類。
3.読み込みが必要と判断した500件ほどを2~3日かけて「抽出」か「ノイズ」かを精査していく。(結果、約30件を抽出として報告)

ノイズ落としだけなら、調査観点をしっかり理解出来ている限り、1日に500~800件くらい公報を見ることができます。
ノイズ落とし後は「抽出+抽出かも知れない」を読み込むのですが、上でも書いたように出願人が同じだったり、競合だったりするので、公報の内容を比較しやすく、以外と早く調査が進みます。

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【参考】公報を素早く判断する方法として、にこちらの記事が参考になると思います。
明細書の読むべきところを分かっていれば、調査スピードは上がります。

さいごに

部署によっては、調査を山のようにこなさないといけないからどうしたら良いの?というのは重要な課題ですよね。

調査の正確性を保ちつつ、調査スピードを上げたいと思ったり、悩んでいる方がこの記事にたどり着いたのだと思っています。
ですが、ベストな調査方法は人によってそれぞれではあるので、私の方法が絶対とは思ってはいません。
とはいえ、ご自身のベストな調査方法を見つけるための参考例として、私のやり方を知って頂けたらと考えています。

私が新人の時は、知的財産法については教えてくれる人が割と要るのに、何故か調査のコツみたいなところは「成長したいなら、技を盗め」みたいな雰囲気を醸し出され、ちょっと放置気味でした(笑)
そんな中でそれなりに苦労をしたので、私は後輩には「私の例を参考に教えるから、色々試しながら自分に合ったやり方を見つけてね」と、伝授するようにしています。
ゼロから悩んで模索することも良い経験にはなりますが、少しでも早く実力をつけてもらう事だって価値があると信じています。

この記事の内容が少しでもお役に立てることがあれば、幸いに思います。

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