博士号取得した今だから分かること。博士学生での不安や得られるもの

昨今、多くの学生の情報発信によって、博士に進学する事ってどんな感じ?ということがイメージしやすくなりました。
私の時代の頃より、進学に当たっての良い面、大変な面など情報がかなり得られやすくなったなぁ、と感じます。

とはいえ、それでもやっぱり博士進学への不安に感じている人がいるのは何故なんだろう?と疑問に思って私なりに考えていました。
私自身も、進学前にも進学後にすごく悩んでいた記憶があり、当時どうやってその悩みに取り組んだか振り返ってみました。
人それぞれ不安に感じたり、悩む理由は異なるので、私自身の経験が参考になればと思っています。

恐らくですが、進学するにあたっての不安になるポイントは以下の2つがあるのではないかと考えています。(人間関係という問題は、進学後に明確になる問題だと思いますのでここでは取り上げません。)

1つ目は、自分が博士課程でやっていけるのか?という不安
2つ目は、卒業後は希望の仕事や進路につけるのか?などの将来への不安

この2点に焦点を当てて、私がどのように取り組んだか、そして、どう思ったかを紹介していきます。




博士号は肩書きの一つでしかない事。だからこそ大事にすべきは自分の気持ち

早速ですが、2つ質問をしたいと思います。

(1)博士課程に進学したいと思うのは何故ですか?

まずは、進学をしたいというきっかけになる自分の気持ちを確認してみてください。

研究が好きだから?
就職活動が上手くいかないからとりあえず進学?
アカデミアの道に進みたいから?

人それぞれ理由はあると思います。
「進学には、こういう理由でなければいけない」という事はありませんが、もし進学後に悩んだとき、進学すると決めた理由をほぼ必ずと言って良いほど振り返ることになります。

(2)博士号を取得した後の自分を、どうイメージしていますか?

「将来の事なんてまだ分からないよ」とか、「数年後には自分の考えが変わっているかも知れない」と思うかも知れませんが、それでも良いので考えてみてください。
進学前と進学後で考えが変わるのは悪いことではありません。
私自身、進学前後で将来のイメージが大きく変わっています。

さて、将来の自分はどうなっていたいでしょうか?どんな姿をイメージしているでしょうか?

白衣を着て、バリバリ研究をしている自分でしょうか?
大学教員として指導者になっている自分でしょうか?
大企業の研究部門でチームリーダーをしている自分でしょうか?

将来のことを考えてみるということは、そこに大学院進学に問わずとても大事な事です。
そして、もしも進学後に将来の考え方が変わったとき、それは研究生活の中で自分が成長した結果という事なので悪いことではありません
将来の考え方が変わったのは、「博士という進路を選択したからこそ得られた気づき」だと思います。
早く気がつけた分、自分の将来への軌道修正ができるチャンスでもあります。




博士号は肩書きの一つでしかない。だからこそ、目標や希望を持って欲しい

これは、博士号を取得して働き始めて実感することだと思いますが、博士号は肩書きの一つでしかありません。
「博士号」という肩書きを持って有利になる場面は本当に限られていると思います。
第三者からは「博士号取るまで勉強を頑張ってすごい」という評価は得られるかもしれませんが、例えば就職に有利になる等の効果があるかは、あなたの進む道で随分変わってきます。

それでも、私が大事にして欲しいなと思う事は「ちゃんと将来に目標や希望を持って進学してほしい」いうことだと思います。

もう少し補足すると、私は、博士号は「自分は大学の研究室で頑張った一つの証明」という受け止め方をしています。
あくまで、これは最終的に博士号という肩書きがあまり関係ない道へ進んだ私の考え方なので、参考程度に受け止めてください。

大事なのはいかに博士号を活かすかではなく、どんな経験や価値を得たか

少しだけ自分の話をしますと、私は研究とは関係ない仕事(知財関係)についています。
研究生活の中で自分の考え方が変わっていき、結果として現在の仕事を選択しました。
本音を言うと今の仕事に就職したばかりの頃は「これで良かったのだろうか?」と思う自分もいましたが、今では博士に進学したことについては「それはそれで良い経験をした」「自分自身の成長に繋がった(仕事をする面ではプラスのところもあった)」と受け止めています。

博士号という肩書きに縛られすぎていないか?

「博士号を取得する」ということは「数年の研究生活を頑張った結果」ということですから、とても素晴らしいことです。
ただ、無意識に「博士号であれば、研究者になるには有利になる」といったことに縛られていたりはしませんか?

最終的に「博士への進学という選択」と「将来選ぶ道」が違っても、研究生活で学んだことが全く意味が無くなることはないと私は考えています。

どんな事も活かすも殺すも自分次第です。
学んだことや身につけたことの一つでも役に立つことがあれば、あなたの選んだ道は意味があったと言えます。

博士という研究生活で得られるのは研究成果だけじゃない

特に博士としての大学での研究生活は、「実験台に向かい、データを出してまとめる」だけではありません。研究生活の中で、いかに研究するための実力やスキルを身につけていくかも大事な事です。

  1. どうしてその研究をするのか(課題の抽出や目的の設定)
  2. どんな実験をすれば良いのか(手段の決定)
  3. 得られた結果からどんなことが分かるのか(論文やプレゼンテーション)

1,2は、問題や課題に対する「思考力」を鍛えることになり、3は「自分の考えを表現する力(プレゼンスキル)」を鍛えることになります。

これらは学士の研究のころから求められることではありますが、博士になると「出来て当たり前」を求められます。
研究室の後輩の見本にならなければならないので、当然と言えば当然です。
最初は上手く出来なくても、日々の研究で研鑽していきましょう。

特に「思考力」は身につければ、あなたの財産になります
将来どんな仕事についても、この力は役に立ちます。
「思考力」や「自分の考えを表現する力」はどうやって身につけられるの?と思う方は、学会や研究室内での発表などを場数を踏めばレベルアップをしていきます

実際、私自身、研究生活の中で「思考力」は本当に鍛えられました。
そして、それは今の仕事にも本当に役立っています。
仕事をしながら、「何でそうなるのか?」「本当にこれでいいのか?」ということを自分に問う習慣ができていますし、「だから、自分はこういう考えを出した」というアウトプットに繋がっています。
現職は人前に出てプレゼンをすることは滅多にない仕事ですが、このような「思考力」や「自分の考えを表現する力」を研究生活で散々鍛えられていたのもあります。例をあげるなら、新人社会人の頃に与えられたテーマについてプレゼンをしたところ、会社の人から驚かれたことでしょうか。

私は、この会社でのプレゼンによって「学部生の頃の自分と比べたらすごい成長だな」「博士課程で身につけた自分の力を知ることができた」と自分の成長に気づくきっかけとなりました。
私は博士の研究生活でかなり成長の機会を与えてもらったと思っています。

さいごに

いかがでしたか?
博士進学は、自分への影響力が大きい人生の選択だと思います。

私自身、博士課程に進んだ時、途中で退学を考えるくらい悩みました。
当時の教授に何度も相談しながら、なんとか学生生活に取り組み、人より時間がかかってしまったものの学位取得ができた経緯があります。

精神的にも苦労も多かったけど、博士課程という経験が無かったら今の実力(スキル)を身につけるのは難しかったのではないかな、と思うので、辛くても頑張って良かったなと思っています。
教授に退学を引き留めてもらわなかったら、気がつけなかったことです。

大きな一つの進路の選択に、少しでも私の経験が役に立てば幸いに思います。
そして、あなたの選んだ選択が、後悔の無いものになって欲しいと願っています。

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皆様の進路選択の参考になればと思います。

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